最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)1429号 判決 1968年6月27日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人樋渡道一の上告理由について。
原審の確定したところによれば、上告人を含む四〇数名の露店業者は、昭和三一年九月頃、各自出資して、共同で土地一九〇坪を購入し、出資者を会員とし、その親睦、福利増進を図り、これと共に事業を行うことを目的として、朝市協和会なるものを設立し、その規約に基づき会長に為国初太郎を選任した。その後右協和会は、同年一〇月ころ、被上告組合との間で、右土地と被上告組合所有の本件土地とを交換して使用する旨の契約を締結し、協和会の会員は本件土地の上に、共同の店舗を建築し、これを使用していた。次いで昭和三三年一二月、右協和会と被上告組合との間で、協和会はその所有土地を被上告組合に譲渡し、協和会の使用している被上告組合所有の本件土地を被上告組合に返還することを約した。そして、右契約は、協和会の会長である為国が被上告組合と交渉して締結したものであるというのである。
この事実関係によつてみれば、右朝市協和会は、各組合員が出資し、共同の事業を営むことを約して成立した民法上の組合に外ならず、本件土地の使用権およびその地上の共同店舗は、組合財産として、組合員に合有的に帰属したものといわなければならない。そして、為国が右協和会の会長として被上告組合と本件土地に関して前記の契約を締結した等前記の事実に鑑みれば、右為国は単にこの組合の内部的な業務執行権を委任されていたにとどまらず、対外的にも各組合員の代理人として総組合員を代理する権限を与えられていたものとみるのが相当である。しからば、同人が協和会の会長として、被上告組合との間で締結した本件土地に関する前記返還契約は有効に成立したものであつて、これにより、組合たる協和会の右土地に対する使用権は消滅し、ひいて、その組合員たる上告人のこれに対する使用権も消滅したものといわなければならない。したがつて、これと結論を同じくする原判決(引用の第一審判決を含む。)は、結論において相当である。所論は、独自の見解であつて採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)
裁判官入江俊郎は海外出張のため署名押印することができない。
(裁判長裁判官 長部謹吾)